法人概要

設立趣旨

設立趣旨

 怪談は世界平和に繋がる。いきなりそんなことを言われると、ほとんどの方は奇異に思われることでしょう。しかし、これは十年間プロとして怪談に関わる活動に身を投じてきた私が、それを通して辿り着いた結論なのです。
 怪談と一口に言っても、ジャンルとして細分化するといくつかの種類に分かれます。『四谷怪談』などの古典怪談、泉鏡花らによる怪談文芸、落語や講談の怪談噺や怪談映画等々、視点によって様々な分け方が出来るかと思います。そんな中、私が注力して取り組んでいるのは怪談実話、或いは実話怪談と呼ばれるものです。これは俗に言う「本当にあった怖い話」のことで、実際に誰かが体験したものです。幽霊、金縛り、心霊写真、虫の知らせ、祟り、神罰等、常識を超えた体験をした方はたくさんおられます。そのような方に取材し、それを文章作品なり、語りなりで世に発表されたものが怪談実話です。私もこれまで多くの方からお話を伺いました。現場まで足を運んだり、物証を見せて頂いたりすることも少なくありません。

 このような形で怪談に携わっていると、怪談とはただの怖い話ではなく、日本という国が生み出した素晴らしい文化であるということに気付くに至りました。
 日本人であるなら、怪談が夏の風物詩の一つであるという認識は誰しもが持っていることでしょう。これも怪談が日本の文化であるという一つの証拠になります。
 この怪談という文化の成立は諸説ありますが、文献に見られるものとしては、古くは平安時代にまで遡ることができます。その後の時代に目をやっても、流行り廃りはあるものの、今日まで消えることなく連綿として受け継がれてきていることが解ります。時代とともに途絶えていった文化が数多くある中、怪談が長きに亘り多くの人達の心のどこかに根付いている、それは意識しようとすまいと、いつの時代においても怪談が必要とされていたから、つまり怪談というツールが社会の役に立つからに他なりません。
 ではどういう点で役に立つのでしょうか。
 まず一つは、世代間コミュニケーションの構築に怪談は大変有効であること。怖い話を楽しむのに年齢は関係ありません。ということは、親子は元より、お年寄りと小さな子供といったような年齢が離れている者同士でも、怖い話や不思議な話について語り合うことが出来るのです。それは怪談が性別年齢を選ばない物語だからです。様々な世代の人たちが一つところに集まって怪談を聴いて楽しむ。その後、聴いた話について語り合う。同じ場を共有し、同じ話題で盛り上がることが出来る。それが可能なのも怪談ならではであると言えます。

設立趣旨

 次に、怪談は土地の記憶を世代から世代へと伝えていくのに有効なツールたり得るということが挙げられます。大きな災害があったとします。その恐ろしさは人々の記憶に深く刻まれますが、時の流れとともにそれも風化してしまいます。しかし、その記憶を怪談という物語に転化すれば話は違ってきます。その災害で亡くなった人の幽霊が出たという恐怖譚は、人の口から口へ、世代から世代へと語り継がれていく可能性が飛躍的に高まります。なぜならそれは、直接的な注意喚起ではなく、物語、伝説になるからです。人々の興味を惹く「幽霊が出た」という話に加え、その背後にある災害についても語られることにより、恐怖の記憶は風化を免れるのです。日本人はこれまで怪談を無意識の内に、そのような世代を跨いだ情報伝達のツールとして活用してきました。これは日本人の持つ死生観とその社会の仕組みに合致した、大変に有効な方策であると考えられます。

 特に戦争体験者の高齢化が進み、その悲惨さを語る方々が減っている現在、怪談の必要性はこれから益々高まるのではないでしょうか。
 更にもう一つ、怪談には鎮魂という役割があります。怪談が夏の風物詩になった理由はいくつかありますが、その中の一つがこの「鎮魂」なのです。
 お盆、地獄の釜の蓋が開き、亡者が彼岸から此岸へと戻ってきます。その中には、自身の死に納得していない、荒んだ魂も少なからずいることでしょう。そんな彼らに語って聞かせるのが怪談なのです。怪談に登場する亡霊たちは、不本意な死に方をした者である場合が多くあります。そのような話を似た境遇にある御霊に聞かせることによって、彼等の心に安らぎを与えることが出来るのです。そして、亡くなった者が安らぎを得るということは、遺された者たちもまた安らぐことになります。鎮魂とは先に逝った者と遺された者の心に安寧をもたらすことであり、怪談は相手のことを思って語る、真心の物語でもあるのです。
 以上のように、怪談を文化として捉えると、様々な益をもたらしてくれることが解ります。
 怪談は見えない世界を垣間見た人達の物語です。見えない世界を感じることが出来れば、人は自分の行いを律するようになるに違いありません。また、相手への思いやりも生まれるでしょう。世界中の人達がそうなれば、世界に真の平和をもたらすことも出来るかもしれません。
 ところが、現代の日本社会では、七十年代に興った心霊ブームの影響で、怪談は良くないもの、不吉なもの、人を不幸にするものといった認識が席巻しています。

設立趣旨

 世代間コミュニケーションの構築、防災意識の醸成、鎮魂、こういった効果を生み出す怪談を上手く活用すれば、まちづくりに繋げていくことも可能です。ただそうするためには、この誤った通俗的怪談観を打破していく必要があります。そうした上で、怪談を用いて住みよい社会の構築を目指して行く必要があります。
 これまで個人的に行ってきた怪談イベント開催のノウハウと人脈を活かしつつ、更に深く、更に本格的に、活動を展開していきます。具体的には、歴史建築や公共施設等での怪談ライブ、怪談イベントの開催、地域のイベントやお祭り会場で怪談を気軽に楽しんで貰う小規模の怪談ブースの設置、学校や町内会の行事においての怪談の実演、各地域での怪異体験の取材、書籍の出版等が挙げられます。
 将来的には地方自治体、学術機関、他団体、企業等とも連携することで、全国規模で怪談文化の普及振興推進を図り、より良い社会の実現を目指していく、そのためにもNPO法人化が望ましいと考えるものです。

代表者紹介

宇津呂 鹿太郎
宇津呂 鹿太郎(うつろ しかたろう)
兵庫県尼崎市出身。怪談作家。NPO 法人宇津呂怪談事務所所長。
幼少期より怪談の蒐集を始め、現在に至る。
これまで集めた怪談は七百話を超える。怪談作家として自ら聞き集めた怪異体験談を書籍化する傍ら、各地で怪談ライブの主催、出演も行う。怪談を百円で買い取る店「怪談売買所」の企画は、その奇抜な内容から新聞やテレビ、ラジオ等で大きく取り上げられた。著書に『怪談売買録死季』(竹書房)、『兵庫の怖い話―ジェームス山に潜む老紳士―』(TOブックス)等、DVD に『怪奇蒐集者宇津呂鹿太郎』(楽創舎)等がある。
また『怪談のシーハナ聞かせてよ。』(エンタメ~テレ)や『怪談テラーズ』( MONDO TV )、『所さん!大変ですよ』( NHK )等、テレビ、ラジオ番組にも出演。
現在、尼崎市の値域コミュニティラジオFM-aiai『まいど! あまがさき』と『ミュージック★どらごん』に月一パーソナリティとして出演中。

役員紹介

  • 副理事長
    長嶺 英貴(ながみね ひでき)
    映画コメンテーター。昭和39年生まれ。五歳から外国映画、日本の怪談映画を好きになり、尼崎シネラティエラ、難波ジョイシネマで中心的存在として映画興行に関わる。クラシック映画を中心に、怪談イベントでは特に司会進行で関わり、出来る限り観客が分かりやすく楽しめるトークを心がける。最近ではFM京都のパーソナリティ、「チャップリン日本暗殺指令」など舞台の脚本にも挑む。
  • 副理事長
    宮野 雅範(みやの まさのり)

    尼崎市生まれ、大阪府在住。平成28年に大阪府知事表彰(薬事部門)受賞。

    幼少の頃から趣味でエンターテイメントの世界に魅せられる。学童の頃 ブルースリー作品に出会い衝撃を受けた。後に007シリーズ、SFドラマ・スタートレックの世界観に魅了された。スポーツ分野では、ラグビーワールドカップ2019日本大会に熱狂した。また有名声優、芸人らの活躍の場を提供するなど、エンターテイメントに寄与している。

    怪談は巷で語られていくものであり、また各地域の文化の一部であり、後世に受け継がれるものです。
    怪談を通して、皆さんにお伝えすべき組織でありたいと願っております。

  • 監事
    見市 幸男(みいち ゆきお)

    NPO法人まいどいんあまがさき 理事長
    あまがさきサウンドネットワーク 代表
    障碍福祉サービス事業所 iz 管理者 サービス提供責任者 コーディネーター

    様々な障害を持った人が安心して暮らせる社会を作りたい! 行政に任せきりにするんじゃなくて、もっと地域密着型の障害福祉に取り組もうと、まいどいんあまがさきを作ろうと発案した張本人。時には悩んだり怒ったりしながら、日々全力疾走してます。